モノやブランドを生活者とのインターフェイスと見立てる事業共創

モノ+サービスで生活者との新たなインターフェースを作る

※はじめに、この項目でご紹介するプロジェクト事例は当然ながら守秘義務があるため、複数の事例を織りまぜ、デフォルメしています。

あくまでイメージを持っていただくためのものであり、記事内容そのもののプロジェクトではないことをご了承ください。

モノ+サービスで生活者との新たなインターフェースを作る

今回は新規事業の取り組みを一巡したわけではないものの、数人程度の新規事業チームができ、新規事業を検討し始めた状態に有効な伴走プロジェクト事例をご紹介します。

このような場合にSEEDATAが得意なパターンが、モノにサービスやネットワークを拡充する事業共創です。(もちろんサービスを中心とする企業に付与するモノの開発をサポートすることができますが、その場合製造業とのコラボレーションが必要となります。)
たとえば、パワードスーツ、介護用ベッド、特定の端末を作る……など、完全にモノオンリーの新規事業をおこなう場合は、工場や生産技術を持たないわれわれの得意分野ではありません。
しかし、その介護用ベッドに健康サービスをプラスしてデータ活用する、またはロボットに協賛をつける、他の会社を紹介するといった形で、モノ+サービス、またはモノ+ネットワークで事業を成長させるパターンの事業共創は可能です。

モノ作りを専門とするクライアントに対し、われわれがサービスをデザインし、ともに事業を作るのが典型的な事業共創のパターンになります。

アフターデジタルの世界においては、あらゆるモノと人がネットワークでつながり、新たなインターフェースになっていきます。
博報堂では、そこから新たな体験やサービスの可能性が広がり、社会の仕組みと市場が生まれていく「生活者インターフェース市場」の到来と定義しています。

生活者インターフェース市場|博報堂 HAKUHODO Inc.
ヒトとモノの境界線から、新しい生活が始まる。新しい市場が生まれる。「生活者インターフェース市場」における博報堂の新しい取り組みと、最新のテクノロジーや仕組みについての記事をご紹介しています。

あらゆるモノと人がネットワークでつながった世界では、さまざまなデータを取得することが可能になります。しかし、生活者が本当に喜ぶサービスにしたり、価値を感じて自らデータを提供してくれる状態にするためには、生活者に行動してもらえるよう心のホット・ボタンを押す必要があります。それはインサイトやジョブ、義憤であり、SEEDATAの出番です。

SEEDATAが製造業と一緒にサービスを作ることで、生活者とメーカーが直接つながる状態を作るだけでなく、生活者が価値を感じてくれるサービスがあるからこそ、モノの価値もさらに高まり、結果としてデータ活用も可能になります。
これらは技術視点ではなく、生活者起点で考えていかなければなりません。

そしてこのようなケースにこそ、博報堂の介在価値があると考えています。
これまでユーザーがモノを使っていても、メーカーとモノの使い手がデータでつねにつながることはありませんでしたが、「ミライの事業室」チームでは、クライアントの持つモノがサービスとひとつになり、インターフェイスとなり、顧客とつながり続ける形を目指し、支援してきました。

これこそが、モノの生活者インターフェイス化、もしくはモノブランドの生活者インターフェイス化と私たちは捉えています。

事業群の傘となるテーマ=哲学の作り方

では、実際どのようにプロジェクトを進めていくかについてですが、これまで何度も解説してきたとおり、われわれがもっとも重要視しているのが「ブランド哲学」です。

新規事業を作る際は、まず、健康、医療、美、サステナビリティ……といった大きなテーマで事業構想をしていきます。大きな価値を目指しているからこそ、テーマの下にはひとつの事業だけではなく、複数の事業群を作ることをご提案しています。
それらの事業を技術起点で考えるのではなく、生活者発想で考える必要があります。
とはいえ、生活者の望むものをすべてつけてしまうと、どこのブランドもみな同じような内容になってしまい、ブランド独自の特色を出すことはできません。

そこで、どんな事業群が作るかはさておき、経営戦略起点でもなく、技術起点でもない、生活者視点での判断基準をひとつ決める必要があります。
この生活者起点の判断基準をSEEDATAコミュニティでは「哲学」と呼んでいます。
まず哲学ををしっかりと考えたうえで、技術や経営戦略との接点を作っていくことをおすすめします。

哲学の分かりやすい例として、あるインテリアブランドの例をご紹介します。

コロナ禍で在宅時間が長くなり、宅内を充実させようという人びとが増加しました。仮にコロナが終息してもリモートワークが続くことが予測され、家中の生活の質をあげていくことは、今後も大きなビジネス機会といえるでしょう。
だからこそ家の中に限定したプロダクトやサービスを作り、それらをひとつの事業群にすることは容易に考えつきます。
繰り返しになりますが、その際に技術起点で考えるのではなく、生活者起点で大哲学を考える必要があります。

大哲学は基本的に、生活者が感じている「義憤」から作ります。
たとえば、インテリアブランドのresidentは、「No place like home =帰りたくなるような家にしよう」という哲学を掲げています。

この哲学の裏には、「一番帰りたくなる場所が家ではないこと」への義憤があります。

近年、家でも職場でもない第3の場所=サードプレイスを持つという考え方が話題となりましたが、これは多くの人にとって家が安らげる場所ではないことの表れともいえるでしょう。
家は帰るだけ、休むだけの場所になりがちな人が多い現実に対し、「家を絶対に帰りたくなる代替のきかない最高の場所にしたい」という強い哲学を決め、そこから事業を考えていく流れです。
哲学が決まれば、一番最初に必要なのものは寝具か、リビングか、ソファか、または家の中をコーディネイトをするインテリアサービスかといった具体に落としていくことができます。

このように、われわれが大手企業のサービス開発に伴走する際は、ひとつの事業ではなく、事業「群」を考えることをご提案しています。
事業群を作る際のテーマは、技術起点ではなく、生活者の持つ義憤から「哲学」を作り、哲学を実現するためにどんな顧客体験が必要で、そのために必要なのはモノかサービスか、モノとサービスをどう組み合わせればいいのかといった順で進めていきます。