2019.12.03 | 流通(retail)

SD/Rを活用して既存商品の「刺さるキーワード」を見つける方法 

SEEDATAではこれまでも数多くの新規事業、新商品・新サービス開発を支援してきましたが、既存事業や商品の支援もおこなっています。

そこで今回は、われわれがどのように、既存事業や商品のコミュニケーションを改善させることに成功しているのか、事例をもとにご紹介します。

SD/Rとは?

2019年9月1日から恵比寿ガーデンプレイスにて、SEEDATAがプロデュースするSD/Rという画像認識技術を活用したソリューションが展開されています。カメラ内蔵型の什器を設置し、クライアントの商品をそこに置いて生活者の反応を観察、ヒアリングし、販売しています。説明員にはその際に、什器に興味を示してくれたお客様に対して商品の説明をし、生活者のインサイトを聞き出しながらリアルタイムで仮説検証をおこなうことが可能です。

SD/Rは、東京大学生産技術研究所佐藤洋一教授との共同研究を通じて開発を進めているものです。実証実験を経て11月1日から稼働しています。

仮説を当てながら刺さるキーワードを探っていく方法

今回事例としてご紹介するのは、ある大豆肉の商品です。

ブロックのものは湯で戻すという手間がかかりますが、自分好みに調理することができます。一方、カレーなどに入っている状態のレトルトは、レンジで温めるだけで食べることが可能です。

この商品は発売から2年ほどですが、革新的な商品であるがゆえに、どのようにそのベネフィットを顧客に伝えていけばよいのか、悩んでいる部分がありました。

また、クライアントも、ターゲットが誰なのか自信を持って絞りきれていない側面がありました。ビーガンで売りたいのか、どんなコミュニケーションキーワードを選択すべきか、という状態からのスタートです。

もともと大豆肉はビーガンフードとして販売されていたため、SD/Rでも1日目、2日目までは「注目のビーガンフード、地球に優しいエコなお肉」ということを訴求ポイントとし、ディスプレイに表示してました。しかし、棚に興味を持ってくれる人はヴィーガンやフェイクミートが流行っていると知っている企業のマーケッターの方や外国人の方ばかりでした。

販売員として立ったSEEDATAスタッフも、初日、2日目は、どう伝えればどう思ってもらうことができて売れるのか、まったく分かりませんでした。そこで、仮説をあてながら探っていくことで、最終的には「肉だと思ってもらえれば買っていただける」ということが分かりました。

 

調査をしながら、リアルタイムで性年代によっても質問を変えるようには意識していますが、まったく知らないという人も訪れるため、いったん「大豆からできた大豆肉です」と説明します。

その後、どう当てるかはその場で考える必要がありました。「普段食物繊維は意識してとってますか?」という話をして、たとえば「食物繊維は別にとっていないがジムで身体を鍛えていてタンパク質は意識的にとりながらカロリーは抑えている」と言われたら、「脂質が低くてタンパク質が高くて鶏むねよりカロリーは低い」など商品の使える機能を引っ張ってくるイメージです。

ただ、結論として、ワークアウトしてる人たちにはあまりささらなかったため、彼らはそこまで味を求めてないのではないかと感じました。ここまでで、ターゲットはざっくりと「どちらかというとダイエットにそこまでストイックになれない人たち」であるということが分かりました。

2日目で見えてきた情報の伝えるべき順番

2日目にまったく大豆ミートを知らない30~40代会社員の方が来てくれました。初日にビーガンフードでは売れないなと感じたため、

①大豆からできた大豆ミートである

②食感は肉であること、大豆ミートと言っているがほぼ肉と変わらない

③大豆からできているため低脂質で食物繊維がとれる

という順で伝えました。

しかし「普段からそんなに肉は食べないし、健康を気遣わなくてはいけないとは思っているが、特段意識したり健康にふりきった食べ物を食べるほどではないから買わない」という結果でした。

前述の方からは「年を取ってくると健康に気をつけなければいけない」という話が出てきたので、おそらく健康食や健康にいい大豆肉という風に捉えられてしまったのでしょう。

 

ここで分かったのは、

「ワークアウトまではしていないが、年齢が30代から40代と上がってきて、食生活を気にし始めている。しかしそこまで深刻ではないから、とくにこれといった努力もしていないという人たちに対して、たんぱく質や脂質ゼロといっても刺さらない」

ということです。

この理由として、

「基本的に脂質ゼロの肉は美味しくなさそうだし、体型や栄養などは気になるが、我慢して食べるほどではない。そもそもお肉は贅沢に食べるものであって、我慢して食べるものでもない」

という生活者のインサイトがあります。

そのため、単に「コレステロールゼロのお肉です」と、ギルトフリー文脈で価値を伝えてもワークしないからこそ、工夫が必要でした。

 

そこで、3日目にコミュニケーションの順番を以下のように変えてみました。

①大豆からできた大豆ミートである

②コレステロールがゼロで普通の肉ではとれない食物繊維が多く入っているという機能

③食感は完全に肉で黙って出されたら気が付かないレベルなので罪悪感なく食べられるギルトフリーな贅沢な肉

すると、このように伝える順番を変えたことで初めて購入してもらうことができ、それ以降その伝え方で4日目には15個販売することができました。

ここでの重要なポイントは「知識を提供する順番によって持っていただく印象はまったく異なる」ということで、最後に「肉です」ということで、消費者に「これは肉なんだ」と理解してもらえたということです。

説明の中には「食物繊維」や「コレステロールゼロ」というワードが出てきているにも関わらず、肉の印象が一番残るため、「肉なのに食物繊維が多い、肉なのにコレステロールがゼロ」というように肉として評価いただくことができたのです。

SD/Rの取り組み自体は複数人のアナリストでおこなっていましたが、チームのメンバー同士で

・どんなコミュニケーションをしたらどんな反応があったか

・その人のライフスタイルはどんなものか

・そこにおけるジョブはなにか

などは随時共有しています。

さまざまな方法を試行錯誤する中で、私がこの方法を取った際に偶然売ることができたため、この方法をチームで共有し、その後も売り上げていくことができました。

購入してもらうためのコミュニケーションを見つける

当初は最初に「これは肉です」と言ったほうが興味を持っていただけると思っていました。ただそれだと、何回やっても購入いただけなかったので、試しに順番を変えてみました。

大豆肉には

・食物繊維がとれる

・コレステロールがゼロ

・脂質もほとんど入っていない(0.1g)

・カロリーも鶏むね肉より低い

・たんぱく質も鶏むね肉と同等くらい

という機能があります。

コレステロールや食物繊維がご評価いただけるというのは2日目の時点で分かっていましたが、どれとどれを組み合わせていくかも、いろいろあてて探っていきました。

 

数ある機能の中でもっとも評価いただけたキーワードは食物繊維でしたが、

A.我慢しないで食べられて、かつ食物繊維がとれるからたくさん食べていい

B.脂質がゼロの肉だから食べてもいい

ではまったく異なり、後者のほうが我慢している感が出てしまいます。

普通の肉に対して食物繊維が取れることを付加したほうが、よいということが2日目に分かったため、3日目からは食物繊維を中心に、肉なのに食物繊維がとれるという説明をおこないました。

「どんな知識をどんな順番で出し入れすれば売れるのか」

このように、SDRでは基本的に1つの商品を2週間かけて調査をおこなっていきます。現在は別の商品を手掛けていますが、この商品では、興味を示してくれた潜在顧客のライフスタイルをヒアリングし、インサイトをフィードバックし、それを元にクライアントとディスカッションをおこなって改善をおこないました。

商品によってコミュニケーションは変わりますが、どんなコミュニケーションをすれば買っていただけるようになるかはSDRのアプローチで見つけることが可能です。

現段階では什器自体は実証実験の段階のため、データをどう使うかも研究中です。たとえば、表情が怒っている、またはびっくりしてるなどのデータはとれますが、そのびっくりが何を意味するかまでは機械は読み取ることができません。

それを今、実際の購買データや商品を触ったor触ってないなどによって、どんな意味をもたせるか考えている段階です。

そのため、現在はデータによるフィードバックにはそこまで比重は置いておらず、説明員があてたヒアリングを中心にフィードバックしています。当然最終的には什器のみで可能なかぎり分析することを目指しています。

 

カメラがアナリストの分析までを導けるようになるかどうは未知数ですが、人の目線がディスプレイに表示されたどの部分を見たのかを追うことが可能です。

このディスプレイはあまり見られていない、この展示はワークしていないという事実に基づき仮説をあてて、最終的には今説明員がしていることを無人でおこなえるようになるのが理想です。

 

売るためには重要なことは、「どんな知識を、どんな順番で出し入れするか」ということです。その商品の機能の中で言えることはたくさんあっても、組み合わせと、言えることをどういう順番で知識として相手に与えていけば、どんな印象を与えるのかという2つを見つける必要があります。

 

今回の事例のように、現在、既存事業や商品のコミュニケーションでお悩みの担当者さまは、ぜひSEEDATAにお問合せください。

SD/Rでは、実際に販売まで行えるため、購入に至る確かなコミュニケーションキーワードの開発を行うことが可能です。