2021.07.19 | D2C

モノ売りメーカーがモノを売り続けるために必要なサービスデザインの考え方

近年、これまでモノ作りをメインでおこなってきた大手製造メーカーでも、サービス開発に取り組もうという動きが広がっています。
SEEDATAではすでに多くの企業のサービス開発に携わってきましたが、メーカーの方々かには、以下のようなサービス開発に対する思い込みが散見されます。

「サービスというのはモノを売らないこと」
「モノ売りは脱却してモノじゃないところで稼ごう」

このような考え方から、長年モノ作りをしてきたからサービスはできないと諦めてしまう、またはモノを売らないサービスを作ろうとしてしまいがちです。

メーカーにとってのサービスとは、モノを売らないことではなく、モノの売り方を変えることです。

ネスカフェアンバサダーを例に、サービスの仕組みを分解して考えてみましょう。

既存商材にハードを組み合わせたサービス開発の成功事例

ネスカフェアンバサダーは、既存商材であるコーヒー豆と、コーヒーを簡単に抽出できるマシンをオフィスにおいてもらうサービスです。

ポイントはコーヒーはネスカフェがもともと持っていた既存商材である、という点。
単にコーヒー豆や粉を売るのではなく、マシンというハードとセットにすることで職場で簡単に作れるカフェという新しい顧客体験を生み出しました。

「サービス」というと、目新しいものや、これまでとは異なる遠い領域に取り組まなければと思いがちですが、既存商材を売り続けるために新しいモノ(ハード)を合わせ、これまでにない新しい顧客体験を作ることこそが、サービスの本質です。

サービス開発の好事例としては、パーソナライズシャンプーのメデュラもあげられます。

メデュラは、自分の髪にぴったりのシャンプーを診断して届けてくれる、定期販売のサブスクリプションサービスです。
このサービスを分解すると、シャンプーという既存商材に、「診断」「カスタマイズ」という機能を組み合わせ、パーソナライズヘアケアという新しい顧客体験を生んでいることが分かります。

商品と組み合わせるのはハードばかりではありません。
アメリカの事例ですが、電動歯ブラシのクイップは、電動歯ブラシをサブスクリプションで届けるすることで、単なる替えブラシの定期販売ではなく、「オーラルケアの習慣作りという体験」を提供しています。

単純に替えブラシであればAmazonでも購入できますが、提携歯科医のクーポンやケア方法などをセットで届けることで、なかなか続かないオーラルケアの習慣化サポートの仕組みを実現しています。

また、国内の好事例としてはキリンのホームタップがあげられます。

既存商材であるビールを、自宅でよりおいしく飲んでもらうために、お店のようにビールをおいしく抽出できるサーバーと、直接自宅に届ける配送チャネルを作ったことで作りたてクオリティの生ビールを自宅で楽しめるという顧客体験を実現しました。

自社の立場にたった際、ビール自体は決して目新しい技術ではありません。キリンが長然培ってきたビールをおいしく作る技術、鮮度を保ちながら市場流通させる技術という既存のアセットを活用しています。

このように、メーカーがサービスに取り組む際には、既存商材とまったく異なるカテゴリでのモノ売りではなく、むしろ既存商材にハードウエアや付属の消費財、あるいはチャネルや診断を組み合わせて届け方を変え、新しい顧客体験を生み出すことが重要です。

アプリや診断だけではサービスにはならない

ここまでお伝えしても、「とはいえ、サービスにはアプリや診断が必要なのでは?」とご心配されることがあります。

そんな方のために、簡単な思考実験をしてみたいと思います。

革新的なメデュラやクイップなどのサービスですが、どんなに優れた診断やアプリがあっても、その先にお金を支払う対象がなければサービスは成立するでしょうか?
診断で自分のヘアケアタイプが分かり、それに適したシャンプーがあるからこそ、定期的にお金を支払う顧客体験が生まれるのです。

同様にサブスクリプションサービスも、ただ定期配送をするだけではなく、何を届けるのかが重要で、一見自社にはない部分がサービスの主役になると思われがちですが、それはひとつのピースでしかありません。
プロダクトがなければサービスが成り立たないことが分かれば、すでにプロダクトを持っている大手メーカーが強いことはお分かりいただけるはずです。

見方を変えれば、すでに市場流通している高品質な商品を作っているというアドバンテージがある大企業は、モノ作り力においてはスタートアップよりも強く、初期投資費用も最小で済みます。
まずは既存商材を最大限に活かすことを考えたサービス設計が重要というのがSEEDATAの持論です。

結論として、サービスはモノを売らないことではなく既存商材を売り続けることであり、モノの売り方を変え、新たな顧客体験を提供することがもっとも重要なのです。

詳しくはinformation@seedata.jpまでお問い合わせください。

製造業におすすめのモノを活かしたサービス開発=DNVB

「サービスとはモノを売らないことではなく」「むしろモノを活かすべき」ことがお分かりいただけたと思いますが、ずっとモノ作りをしてきたメーカーがサービス開発をできるのか?という不安の声もお聞きします。

そこで、モノを活かすサービス開発としてもっともおすすめなのがDNVB(Digitally Native Vertical Brand)です。

SEEDATAではこれまでもDNVBについて何度も解説してきましたが、簡単にお伝えすると、DNVBはアメリカのサービス開発のアプローチで、プロダクト、ブランド哲学、顧客体験をセットで届けます。

DNVBが広がるアメリカの先進事例としてご紹介するのがWarbyParkerです。

これまで、「メガネは店頭でしっかりと接客を受けて買うもので、オンラインでは絶対に売れない」といわれていましたが、顧客体験と哲学をセットにしたことで、常識を覆すことに成功しました。
WarbyParkerは単におしゃれで高品質、お手頃価格なプロダクトをECで売ったわけではありません。
購入前に気になる5本のメガネフレームを自宅に届けて試着し、好きなものを選ぶというサービスを組み合わせました。
それだけでなく、メガネを試着した写真をSNS上でハッシュタグつきで発信し、どれがもっとも似合うかブランドのスタッフやフォロワーに投票してもらうという仕組みも成功要因のひとつです。

さらに重要なのはプロダクトと顧客体験をつなぐ哲学です。WarbyParkerは自分の選んだメガネが似合っているかどうか、多くの人の意見を取り入れるべきという哲学を掲げています。
この哲学に沿い、自分に似合うメガネを比較しながら見つけていくサービスをつけたことで、米国ブランドの中でもとくに著しい成長を遂げました。(WarbyParkerは2021年6月に上場申請をおこないました)

われわれがメーカーと取り組むサービス開発は、基本的にプロダクト、顧客体験、哲学のセットを作ることをプロジェクトの最初のゴールにしています。

以上が、多くのメーカーがサービス開発に対して思い込んでいる「モノを売ってはいけない」への回答です。
サービス開発と聞くと反射的に「アプリやIoTの導入が必要」と考え、先にシステム投資しようしますが、それらはあくまで顧客体験の一部にすぎません。まずはこの組みあわせを作ったうえで必要なものを組み立ていくことをご提案します。

もう一点、よくあるご質問と誤解が
「サービスを作る際には継続課金やサブスクリプションモデルでなければならない」というもの。

結論から申し上げると、サービス=サブスクリプションではありません。
前述したプロダクト+顧客体験+哲学の組み合わせであれば、売り切りでも十分サービスとして成立します。
サブスクリプションモデルは毎月の入金が保証されますが、それ以上に重要なのが継続的な顧客体験です。

たとえば、Warby ParkerのようなメガネのDNVBを想定してみましょう。
メガネ自体は小売りでの売り切りでも、事前予約で必要な際には一時間で渡してもらえるクイックサービスも顧客体験になりえます。
あるいは、購入後にメルマガで、目や商品のケアを情報提供したり、季節ごとにリピートの案内をおこなうことも継続的な顧客体験といえるでしょう。

まずは既存のチャネルを活用して売り切り販売をおこない、じょじょにメルマガや事前お試し会などの顧客体験を組み合わせてサブスクリプションモデルに移行する形でもよいのです。

モノを売らないのではなく、モノの売り方を変えるために必要なのが、プロダクト、顧客体験、哲学です。
この3つを抑えていればサブスクリプションモデルである必要はありません。

最後に、この記事でご紹介した内容はサービスデザイナーや新規事業の選任組織でなければできないのではないか?と思われた方もいるかもしれません。
しかし、SEEDATAではこの3つのコツを誰でも実践できるできるようまとめた動画とスライドをSaaSでご提供しています。
もちろん、案件によってはわれわれが伴走させていただきますが、まずは自律的イノベーションプランニングの支援として、ぜひご活用ください。